王子様とブーランジェール





あっという間にダッシュで廊下を駆け抜けている連中を見送ったまま、立ち尽くす。

美作さんも着いていっちゃったよ。

あの中じゃ、本当に違和感でしかない。



しかし、何だぁ?

あの超美人、狭山たちにとっては国賓級だってか。

おもてなししなきゃいけないってか。

本当に、何者だろうか、あおこさん…。



昨日、思い返してみたんだけど、どっかで見たことあるんだよな…?

パンダフルで見かけたりしてんのかな。



ついつい考え込んでしまう。

しかし、拉致があかないため、教室に戻ろうとした。



「な、夏輝、おはよ」



後ろから突然話しかけられ、ビクッとさせられる。

それは、急だったとか、そんなんじゃなくて。

は、話しかけられた…。

誰だかは、声でもうわかっている。



「…おはよ」



そこには、クラスTシャツに制服のスカート姿で、学祭のうちわを持って立っている。

桃李の姿が。



「狭山さん来てたしょ。夏輝のところに来たの?」

「…知らねえし」

「もう行っちゃったの?うちわにメッセージ書いてほしかったのに。狭山さんに」

「うちわ?」



昨日、配られた水色のうちわか。

表には『星天祭』と黄色い字でデカデカと書いてあって、サッカー部のユニフォームと同じ色合いじゃねえかと咲哉と話していた。

裏返すと、そこは無地で。

そこにはみんなで寄せ書きをするらしい。



だからわざわざやってきたのか。

バカヤロー。狭山に何を書いてもらうんだ。

バカめ!って書かれるぞ。



何気なく桃李のうちわを覗き込む。



だが、そこは戦場だった。



「…はぁっ?…おまえ、何これ」

「いや、あの、わかんない…」



桃李のうちわ…数字だらけ?

何か、キモい。

だが、よく見てみると、それは俺にとっては苛立たしいものであり…。



これ、ケータイの電話番号だ。

しかも、ほぼすべて、野郎の字。




『080-22##-#### 2-5橋本 今度電話ください!』



と、いった書き込みが、いくつもいくつも…!

中にはLINEのID番号まで!

うちわにびっしりと書き込まれており、思わずいくつあるか数えてしまった。

表にも書いてある。

祭のロゴも見えなくなっているぐらい。



何なんだこれは…!