王子様とブーランジェール




ちっ。拉致があかねえぞ、この攻防!

狭山の金属バット攻撃に、フェンスを伝ってただ逃げてるだけ。

しかも、攻撃の切り返しが早い。

スピードあるな。

でも、逃げる以外どうしようもない。

こっちが拳も蹴りも振り上げる気が全くないのだから。




あー。めんどくせー。





『竜堂…おまえの弱点、見つけたぞ?』





…狭山は、俺の弱点を、桃李だと言った。

確かにな。

桃李が関わっているとなっちゃ、どんなことも首を突っ込まずにはいられない。

コイツの見立ては正しい。



…だがな?

俺だって、バカじゃない。

弱点を嗅ぎ付けられたのならば、こっちも弱点を探してやればいい。



俺は、この弱点宣言をされた後、考えた。

狭山はしつこい。これから先も、ずっと俺に絡んでくるに違いない。

時には、桃李を巻き込んでくる可能性もある。

こういうめんどくせー事態に、何かを備えておかねばならない。






『…え、いやいや。ちょっと待って…女とか…』

『おーい!何、竜堂にときめいちゃってんだおまえわ!カレシにチクるってーの!』

『エリのお気に入りはたぶん、ナツキくんの玄関でのバックハグかな。あれ見た後にしばらく使い物にならなくなっちゃった』






この数ヶ月のことを、思い出してみて。

俺は、とあることに気付いた。




狭山って…見た目がハデハデのギャルで、粋がっているけど。

本当は、こいつ、実は照れ屋なんじゃないだろうか。




お色気全般、苦手なんじゃないんだろうか。




そして、なぜか。

ツボが俺。




…狭山の弱点、見つけた。




狭山の金属バット攻撃は、依然として続いていた。

コイツと身長差あるから、攻撃の回避は正直、高瀬とのバトルよりキツい。

コイツ、すばしっこいんだよな。

まるで、小型犬が足元をウロチョロするように。

そんでもって、パワーもある。

狭山をなめてかかったら、このスピードで翻弄され、恐らく何が何だかわからないうちに、金属バットでボコボコにされる。

ヤクザを半殺しに出来たのも、頷けるかも。




だが、弱点は…大いに利用させてもらう!




わざとフェンスを背にして、狭山の攻撃を待つ。

だが、待つ間もなく、ヤツは金属バットを振り上げてきた。

…来たぞ!