王子様とブーランジェール




とりあえず応急処置として、小さいガーゼを貼ってもらう。

試合が終わった途端に一気に体がダルくなった。



「…あれ。理人は?」

ケージの入り口近くに潤さんと並んで観戦していた理人の姿がない。

「和田?なんか女子に連れていかれたわ。急ぎっぽかったけど?」

「は?飲み物買ってきてもらおうと思ったのに」

まさか、また倉庫で女とイチャついてんじゃねえだろな。

俺がこんな痛い思いしている時に。

「水ならあるよ?飲む?」

「マジ?ありがと」

潤さんが用意してくれていたペットボトルのミネラルウォーターを受け取る。

蓋を開けて口をつけた時、リングの隅でフェンスを背に座らされており、大人4、5人に囲まれている高瀬の姿が目に入った。

あ、そうだ。あのゴリラ、大丈夫か?

意識は戻っているようだが。


「おーい。みなみちゃんがその彼を部屋に運べってさー」

「はぁ?みなみちゃんの部屋?って、保健室だろがおい!みなみちゃんも人使い荒くね?俺達招待客でしょ?」

「っつーか!夜薙、てめえ看護師なんだろ?!ちゃんと診たのか!」

「るっせえな夕波チューバー。死んでねえもん大丈夫。昼川、こいつお姫様抱っこして」

「了解です!主!」

一際体のデカい、岩みたいな男があっという間に高瀬を担いでケージを出る。

高瀬を担いだ?相当なパワーの持ち主だ。

そのデカい男に続いて、大人たちはわらわらと出ていく。

「ねえ、ハニー。家で雨宮くん炭起こしてるんでしょ?美味しいシマチョウあるんだけど行ってもいい?」

「日比野は来なくていい。死ね」



あれ…?



その大人の中にいた、たった一人の女性に見覚えがあった。

あの人、桃李の…って、何でここにいる?






「よぉ、竜堂…」



高瀬と大人たちの様子を見ながら、ミネラルウォーターを飲んでいると。

…来た。来たぞ。

今回の諸悪の根源、狭山だ。こっちにやってくる。

なぜか、「クックッ…」と、悪魔の笑みを漏らしている。

ちっ。何でまだ笑ってるんだおまえは。

くっだらねえことに巻き込みやがって…!



言いたいことは、たくさんある。

考えただけでも、イライラしてきた。




「…狭山、てめえ…」

「竜堂…」

「…あぁ?」

「勝負だ…」

「はぁ?」

「今すぐ…ここで、私と勝負だ!タイマンはれ!」



狭山の手には…金属バット!