高瀬は吠えながら、左足を高めに振り上げてきた。
勢いでスピードがついた蹴りが降ってくる。
隙は、逃さない。
右足で地面を押し、右肘を背中側に擦って振り、素早く回って振り返る。
高瀬の位置を確認をして、右足を後方に突き出すように振り上げた。
右足底が、ゴリラ面を隠すように、ブチ込まれる。
高瀬は後方にふらついていたが、そこは逃さず。
右足の着地と共に、左腕を振って反動をつけて、更に左足を高く振り上げて、右頬に炸裂させる。
フォローのハイキック。
俺の蹴りコンボをまともにくらった高瀬は、前方にフラッと倒れ、足元から崩れる。
だが、倒れきる前に、ケージの外からけたたましくゴングがカンカンと鳴って、思わずビクッとしてしまった。
変なタイミングで鳴るな?!
『はいはい!もうおしまーい!…最初のスピニングバックキックで、もう落ちてました!試合終了!…ほら!早く中入って!』
麻倉先生だ。
ゴングを自ら叩いて、マイクで呑気に終了宣言している。
自分の傍にいた私服姿の大人たちに、中に入るよう指示を出していた。
試合、終了…?
お、終わった…?
『試合、終了ぉーっ!最後は竜堂のえげつないけど華麗なるスピニングバックキックとハイキックのコンボで、高瀬はダウン!麻倉先生のドクターストップで、この時間無制限ワンマッチの死闘、15分20秒で制したのは、一年、竜堂ーっ!』
マジか。
本当に…終わったんだな?
あぁぁ…。
『勝者、1年3組、竜堂夏輝ぃぃーっ!!』
局長のアナウンスと共に、観客のがなるような声援がここ一番で沸き上がった。
あまりにもうるさすぎて、耳が変になりそう。
あぁぁ…疲れた。
何やってんだ俺。
15分20秒?…そんなによくやってたな?
ため息をついて、立ち尽くす。
力がガクッと抜けて、ちょっとフェンスにもたれかかった。
「夏輝!…ケガ!」
潤さんがケージの中に駆け込んでくる。
救急箱とガーゼを手に、俺のところにやってきた。
「おでこ!ちょっと見せて!」
「いいよ。自分でやる」
濡れたガーゼを受け取って、自分で傷口があるであろう痛みを感じる部分を拭く。
拭いたガーゼを見ると、真っ赤だ。
うわっ。
「傷は1㎝ぐらいだよ?まだじわじわしてる」
「ホント。なのに結構出たな」
ちっ。爪ぐらい切ろや。



