「…もう、始まった?」
咲哉が体育館の方をチラッと見た。
体育館からは、人の歓声と大音量の音楽が漏れている。
始まったようだな。前夜祭が。
だが、しかし。
中で一緒にキャーキャーと盛り上がってる場合じゃない。
こっちはこっちで、空前絶後の楽しみが待っているのだ。
「おい!まだ?まだかって!」
体育館側の男子トイレの前で、さっきから咲哉と待機している。
スマホ片手に。
「さっきから待ちわびちゃって。おまえら仲良いのか悪いのかわかんない」
「遅くね?!」
どちらかと言えば、せっかちな俺。
早く見たくて、とうとう男子トイレに乗り込んだ。
中には、野郎が二人。
…野郎?
「…ぶはははは!」
その二人の姿を目にした途端。
一気に腹がよじれた。
「えっ?何?何だって…ぶはははは!うわっ!うわっ!やべえ!」
俺の笑い声を聞いて、咲哉もトイレに入ってきた。
姿を現すなり、俺と同様のリアクションとなった。
「ぶはははは!…うくくくくっ…ぶはははは!」
「何だ何だこのギャルたちわ!…ぶはははは!」
やべえ。
予想以上、期待以上の仕上がりだ。
一気にツボが押されまくりだ…!
二人して腹を抱えて、壁にもたれこんでしまった。
理人と松嶋。
二人お揃いのピンクのチアガールの衣装を着て。
ファーのボンボン飾りのついた、金髪のツインテールのカツラを被り。
顔…ギャルメイクだ!
つけまつげをつけ、目の回りは真っ青で。
濃い目にチーク塗って、口紅つけて!
女装だ!もろに!
二人は鏡の前でメイクをチェックしているようだが。
突然トイレに乱入してきた俺を見て「キャー!」と、驚いたフリをしている。
「やっだー。男子、トイレに入ってこないでー?」
「キャーいやらしい!」
バカヤロー!心まで女子になるな!
ここは男子トイレだ!
いや、でも笑える…!
松嶋は、顔も可愛い系だし、170㎝と男子にしては小柄な方だからな。
女装、可愛いぞ。
でも、痩せているのかと思いきや、薄着になると案外しっかりとした体つきだということがわかり、この女子の衣装でその肩幅とか。ギャップありまくりで笑える。
問題は、もうお一方だ。
182㎝と高い身長な上に、バスケで鍛えたそのがっちりしまくって、筋肉ムキムキなその体。
チアガールの衣装、びっちびちにキツそうだ。
女装の中に、おもいっきり男が滲み出てるぞ。



