王子様とブーランジェール





もう、あのライオン丸ヘア…天パはなくなったのか。



桃李の髪を手に取ったまま、そのサラサラにストレートに変わった髪を見つめる。



あんなに大きくうねっていた、桃李の天然パーマ。

ボサボサで、膨らんでいたライオン丸ヘアー。

変えてしまったんだな…。

ストレートがこんなに似合うとは、予想外だったけど。



でも、俺は、あのライオン丸ヘアーも悪くはないと思っていた。

身なりがルーズに見えてしまうのは、否めない。

でも、それでこそ桃李っていうか…。



だけど、それですらも変えてしまった。



眼鏡だって、桃李のシンボルだったのに。

それですらも外すつもりでいたんだろ?

糸田先生の手にかからずとも。



(何でだよ…)



わからない。

桃李にどんな心境の変化があったのか。

こんなに、桃李のこと、見てるのに。




『私、変わりたいっ…』



何で?

どうして、そこまで強く思うんだ?




いやいや、多少は日常生活の態度は改めた方が良いとは、俺も思ってる。

あれじゃ、社会に出た時困るぞ?



だけど、糸田先生の前で打ち明けていた桃李の本音を聞いてしまった時。

正直、不安になった。



桃李が変わりたいと願っている。

…どんな風に?

何で?



ダメな自分も嫌、ドジな自分も嫌、挙動不審な自分も、ヘタレな自分も嫌。

ある程度は改めた方が良いよな?



だけど、それが無くなってしまったら、桃李、おまえ。

どんな風になんの?

桃李じゃなくなるんじゃないんだろうか。



ダメでドジじゃなくなったら、俺の存在、いる?



…いやいや、そうじゃない。

元々は俺が勝手に絡んでいっているだけなんだ。

見ていられない、っていうのを理由に。



だけど、それすらも無くなってしまったら、桃李とは離れてしまうんじゃないのだろうか。

桃李は、俺の知らない桃李になってしまうんじゃないのだろうか。



…いや、考えすぎだよな。

どっかの知らない誰かになるワケじゃない。

何で、こんなに不安になってんだよ。



だけど、桃李がどの方向を…どこを向いているのかわからない以上、不安は消えない。



もう、追いかけていかないと。

ある日突然、気付いたら、桃李は俺の前から消えていなくなってしまうかもしれない。



そんな事を考えてしまった。