「…ちょっと、その抱き方、何?」
「…え?」
桃李を抱き抱えたまま、階段を降りて。
保健室に向かって歩いている最中に。
突然、横を歩いていた黒沢さんに指摘される。
「さっき、お姫様抱っこしてなかった?…」
「あ、でも…」
さっき、階段を降りている時。
お姫様抱っこのままだと、階段を降りづらかった。
それで、抱き方を変えた。
肩に担いでやった。
これなら、階段降りやすい。
脇を抱え、右肩に担ぎ。
足は左手で抱き抱える。
桃李の両手は俺の背中らへんでブラついていた。
「何か…狩りで獲物を担いで帰ってきた猟師みたい…」
俺が猟師で、桃李が獲物…鹿とか?
「桃李、可哀想…」と、呟かれたので、お姫様抱っこに直した。
グサッときた…すみません。
しかし、こんなにあちこちと動かされているにも関わらず、桃李は依然として起きない。
どんだけ深い眠りについたんだ。
体勢を元に戻したところで、横にいる黒沢さんが、再びボヤきだす。
「まったく…睡眠時間二時間って、いったいどういうつもりなの桃李…」
さっき、聞いて明らかになったが。
桃李の昨日の睡眠時間は二時間、だそうだ。
夜中の2時頃に、黒沢さんのケータイに桃李から『りみちゃんおやすみー』と、LINEが入っていたそうだ。
で、今日はパンを焼くために早起きしたから、4時起床。
賞味二時間の睡眠だったということ…。
「桃李は危険だよ。頑張り過ぎにも程がある。極端だわこの子…」
話の流れから、何となく聞いてみる。
「何でこいつ、こんなに頑張ってんの?」
「…え?」
「昔からこんな学校活動とか行事とか頑張るヤツじゃなかったんだけど。いつもマイペースというか、隅でさりげなく暮らしてるタイプだったし…」
「ふーん…」
「…え?何?」
黒沢さんが俺をじっと見ている視線が気になってしまい、思わず問い返してしまった。
「…だから、頑張りたかったんじゃない?」
「どういう意味?」
「やったことがなかったから、やってみたかったんじゃないのかな。未知への自分への挑戦、みたいな?」
そう言って、黒沢さんはぷっと笑った。
「未知への挑戦…はぁ?」
「まあ、今回の桃李はやり過ぎだけどね?後できつく言っとかないと」



