王子様とブーランジェール





「…きゃーっ!」

「と、桃李!」

状況に気付いて女子たちも声をあげている。



ったく…冗談じゃねえぞ!



力を入れて踏み出して、手を伸ばす。

これでもかっていうくらい、前に飛び出して。




何やってんだよ…おまえ!




倒れてくる桃李の頭が、俺の右上腕の内側にバチっと当たる。

こぼれ落ちないように、とっさに右腕で体を抱え込んで引き寄せた。



ぎ、ギリギリセーフ…。

間に合った…!



周りには机がたくさんある。

机の角に顔をぶつけても、床に顔をぶつけても、偉いことになってたぞ…!

今までに、こんなに机の角が恐いとは思わなかった…!

危なかった…!



桃李を腕の中に納めたまま、安堵の長いため息が出た。

まったく…。



「桃李!」

黒沢さんや菊地さんたちが血相変えてこっちに駆け寄ってきた。


「と、桃李!どうしたの!大丈夫…」

「大丈夫…ただ寝てるだけ…」

「えっ?!」



俺の腕の中の桃李は…。

…寝息をたてて、すやすやと寝ている。



「心配ないと思う…たぶん、ただの寝不足…」

「…もぉーっ!何やってんのよ桃李は!」

黒沢さん、俺と同じリアクション…。



しかし、ホントにだ。

桃李、おまえ、何やってんだよ…。

寝不足なのに、早起きしてパン焼いちゃう?普通。

体を労って寝ろ!



何で…。

何で、こんなになるまで頑張ってんだか…。



このバカ…。





その後、揺すったり、叩いたりしても。

耳元で叫んでも、桃李は起きず。

依然、俺の腕の中で爆睡していた。

相当深い眠りに入っているようだ…。




「あぁーん!倒れそうな姫を間一髪キャッチ、夏輝カッコいいぃーっ!」

「ギュッて抱き締めて、超エロいぃーっ!」



しまった。

俺のこじれた恋愛事情を知った咲哉と陣太が、ニヤニヤと何かを言いたそうに冷やかしてきた…!

無理もない…必死で気が付かなかったけど、俺の今の体勢。

桃李を抱きしめちゃってますもの…。



我に返ってしまったら、最後。

密着の最骨頂、ヤバい…!





結局、起きないので。

保健室に連れていくことになった。



俺が抱き上げて桃李を運び。

黒沢さんが付き添いで、一緒に保健室へ行く。



「やーん!お姫様抱っこよー!」

「さすが王子様ー!イッちゃいそうになるー!」



引き続き、先ほどの輩二人が冷やかしてくる。

…え?どこに行っちゃいそうになるって?って、コラァ!

冷やかしお断りだっつーの!