王子様とブーランジェール




「パン…誰に焼いてきたんだ?」



すると、桃李はゆっくりと話す。



「誰とかじゃ…みんな…」

「な、何で?!」

「今週に入ってからパン焼いてない…もう5日もパン焼いてない…寝る前に生地準備できない…朝4時に起きれない…」

「…え?そ、それが?」

「毎日パン焼かないと、しっくりしない…おかしくなる…」

「………」



…何言ってんの?こいつ。



そして、うわ言のようにブツブツと呟き始めた。



「生地こねないと夜寝れないの…オーブン覗かないとストレスたまるの…ぷくーってなるの見ないとダメなの…だから我慢出来なくて、今日焼いてきたの…」



そして、フラフラと教室に入っていく。



な、何だ…?

これ、メンタルもおかしくなっていること、間違いなしじゃねえのか?



首を傾げながら、教室に入る。



だが。嫌な予感はする。



「朝練お疲れー」

すでに先に登校していた理人は、自分の席でケータイをいじりながら、挨拶してくる。

「…お疲れ」

「…どした?」

俺は…目を離せないでいた。

あのおかしくなっている疲労困憊ブーランジェールから。




「桃李おはよー」

「わっ!何なに?パン焼いてきたの?」



桃李が教室に入ってくるなり、クラスの女子たちもその大きい手提げ紙袋に目が行ったようだ。

わらわらと集まり、次々と中を覗いている。


「焼いてきたの…みんなで食べて」


桃李はそう言って、自分の席にカバンを置き、輪の中へ戻った。



だ、大丈夫か…?



しかし。

輪の中の話には入っているもの、気持ち輪の後ろにくっついている感じだ。話、全く参加してない。

そして、ヤツはまたしても。

直立不動のまま寝るという、奥義を密かに御披露目していた。

ガクッとなっては、目が覚めて。

しばらくすると、また寝落ちしていた。



嫌な予感が…する。



「…夏輝?」

「倒れる…!」

「…えっ?!」




桃李のもとへと、駆け出す。

机をかき分けて身を進めている頃には、もうすでに、ガクッと前に大きく揺れていた。



「…倒れるぞ!」



周りの女子に注意を呼び掛ける。

俺の声で気付いた女子は、振り返るが。

すでに、桃李の体はフラッと傾いており。



「…どけ!」




顔から…倒れる!