来客の多かった昼休みも終わり、午後の授業が始まった。
俺は相変わらず、理人の広い背中に隠れながら、授業を受ける。
不意に桃李が視界に入ってくるとなると、どんな有り様になってしまうかわからない。
だけど、ずっとこう理人の背中を防壁代わりにしているワケにもいかないからな。
少しずつ、少しずつ慣れていかないと。桃李のあのかわいい姿に。
そう思って、理人の右肩から恐る恐ると顔を出す。
しかし。
お昼過ぎのこの時間。
桃李は…寝ていた。
しかも、顔を伏せて寝ているのではなく。
肘をついて、そのまま堂々と寝ているのである。
やはり、見た目が変わっても、やっていることは普段と変わらない。
だが、寝顔がしっかりと露になっていて。
口が少し開いている。
ライオン丸ヘアに眼鏡じゃ、この顔は隠れていて見えなかった。
寝顔も…かわいい。
…かわいいじゃねえか!
急に恥ずかしくなり、どうしたらいいかわからなくなる。
とりあえず、持っていたシャープペンで、理人の背中を一発突き刺した。
「…痛っ!…まだ何かしてくるワケ?」
「悪い。でも聞くな。何があったかは聞くな」
俺だって、いつまでもこんなことやっているワケにはいかない。
こんなこと…。
でも、胸の奥のざわざわした感じや、モヤモヤした感覚は落ち着かない。
腑に落ちない、というのが正しいのか。
何だか周りが。
俺の触れて欲しくないところに、次々と触れてくる。
それが、不快でイライラさせられる。
うまく言えないけれど…。
そして、騒動は起こるのであった。
次の授業は化学教室に移動。
すぐさま移動、と思ったが。
理人がトイレに行ってしまい、それを教室で待っていた。
「理人、なかなか戻ってこなくね?下痢でもしてんの?」
「イケメンも下痢するワケ?」
陣太と咲哉が嬉しそうに、理人の下痢疑惑について話をしている。
理人、あらぬ疑惑をかけられてるぞ。楽しいわー。
さっさと移動しなければならないのに、三人で談笑。
早く行かねばならないんだけど、理人の下痢疑惑っていうお題が面白いわ。
「あ、あの…梶くん…」
「…ん?!」
背後から忍び寄る影に気付かなかったのか、名前を呼ばれた咲哉はビックリして振り返る。
振り返ると同時に、背後の影と、ドン!とぶつかってしまった。



