王子様とブーランジェール





「ふざけんな!」



思わずカッとなって、声を張り上げてしまった。

触れられてはいけないような部分に触れられたような気がして、イラッとしてしまったのだ。



すると、狭山はニヤリと笑う。

「よし来た!」みたいな?

俺がこいつの思惑通りになっているのが、読み取れる。



「やはり、神田のことになるとムキになるのだな?あぁ?」

「そうじゃねえ。関係ないアイツを巻き込むな!アイツに構うな!」

「それが、ムキになってるということだよなぁ?ますます利用しない手はないぞ?バカめ!」



ちっ…カッとなった今の俺が何を言っても、言いくるめられる気がしない。



こいつ、絶対何か企んでいる。

それは、負けず嫌いからくる俺との勝負、というところなんだろうけれども。

いや、しつこく付きまとってくるだけなら、何歩か譲って、それは構わない。

取り合わなければいいだけの話だから。

だが、しかし。



『弱点を、大いに利用して…な?』



このくっだらない争いに、桃李を巻き込むことになると、だいぶ面倒な話になるワケで…。



あー!めんどくさ!

ホント、くっだらねえ!



すると、狭山はまたしても「クックッ…」と、悪魔の笑いを漏らしている。

だから!いい加減それやめろ!



「せいぜい楽しみにしとけよ…?」



下から覗き込んできて、獣の目で睨まれた。

しかし、不敵な笑みを浮かべている。



「煩悩に踊らされるがよい…?」



そう言って、狭山は大声で笑いながら去っていった。

悪魔の笑いから、将軍の笑いになっている…。



そんな狭山の後ろ姿を見送りながら。

胸の奥では、ざわざわしてんのか、モヤモヤしてんのか。

何だかよくわからない、気持ち悪い感覚を覚えていた。



それは、この何年間の経緯の積み重なりと。

ここ数日の変化のギャップからくる。

苦悩だったりする。




ちっ…何でだよ。

何で、どいつもこいつも。



(何で、桃李を構うんだよ…)




胸中は、複雑だった。






イラッとした気分のまま教室に入る。

しかし、そこは大変なことになっていた。

なっ、何だこれは!



教室の床一面に、プリントがぶちまけられている。

あちこちにヒラヒラと…。



「あ、あ、あ、ご、ごめんなさいっ!」



やはり、やりやがったか…。

桃李…。