王子様とブーランジェール





やはりあのキツそうなブラウスは、狭山に騙されて着ていたものだったのか。

っていうか、着た時に違和感はなかったのか?

その時点で騙されていることに気付かないとは、やはりあいつはバカだ。

まったく…。




桃李のバカさ加減にうんざりしていると、またしても隣から「クックッ…」と、悪魔の笑いが聞こえ始める。

って、狭山、まだいたのか!



「…楽しかったか?」

「はぁ?」

「…マゼンダピンクのジャーブラが、スィーセクでスッケスケな、神田の爆乳Eカップ…」



変に業界用語が混じっている…。



狭山は下から悪い目で俺の顔を覗き込んだ。



「竜堂…おまえの弱点、見つけたぞ?」



そう言って、教室の方をチラッと見る。

中には、プリントを抱えた桃李が、クラスメイトと話をしている。



まさか、こいつ…。



「…自分の失態動画を見られないように、人前で眼鏡を外させないよう、必死だったよな…?私が気付かないとでも思ったか?」



気付いたのか…!



「あのベストもおまえが貸してやったのか?爆乳晒されジャーブラ透けた姫のピンチを救うヒーロー気取りで何よりだなぁ?あぁ?」



俺が、桃李のことを好きだってこと…!



「…話を聞くと、宿泊研修で神田が絶壁から滑落した時も、迷いもせずに助けに絶壁を降って行ったらしいな?…随分とベタ惚れしちまってるんじゃねえのか?あぁ?」

「な、何でその話を!」

「…私の情報網を甘く見るなよバカめ!」



狭山にまで知られていたとは…!




いや、しょうがない。

別に隠しているつもりはないのだから、しょうがない。

俺が単に桃李本人や、周りにはっきりとそのことを伝えず、話題にも出していないだけで。

でも、隠しているつもりもないのだから、バレるのもしょうがない。

ましてや、桃李本人には、冷たく当たることの方が多いから、その真実をわかってるヤツもそうそういないはず。



だが、この狭山に気付かれたのは…。

…非っ常に、めんどくさい!



俺の弱点…?

桃李が…?



「竜堂よぉ…」



いつもの不敵な目で、悪魔の笑いは続いている。

その笑い、もう止まらないのか?



「いつか、その首を必ずや獲ってやる…」



そして、再度、教室内の桃李を見る。

まるで、獲物を捕らえた獣のような目で。



「…弱点を、大いに利用して…な?」

「な、何だって!」



桃李を利用して…だぁ?