王子様とブーランジェール




恐る恐る振り返ると、俺と木元さんの間に偉そうに立っているチビ…いや、小柄な女子生徒が。

悪そうな笑みを浮かべて俺を見ていた。

木元さんも振り返っており、途端に「うわっ!」と、声をあげてビックリしている。



「何だ何だその反応は!背後から忍び寄る影に気付かないとは、聞いて呆れるな?あぁ?」




な、何だよ…狭山!



普通の男子高校生は、背後から忍び寄る影に気付かないものですけど…。

武装集団が交戦し続けている国じゃあるまいし…。



「さ、狭山、一年のフロアにおまえ何しに来てんだよ!ビックリさせんな!」

木元さんは慌てながらも気持ち後退しながら、狭山に問いかける。

狭山は「あぁ?」と眉間にシワを寄せた。

「…それならおまえも一年のフロアに何しに来てんだよ!まさか竜堂にパシリにされてんのか?ヘタレらしくて何よりだ!バカめ!」

「コラ狭山っ!おまえ、木元さんに何てことを言うんだ!木元さんは俺のためにわざわざ来てくれてんだよ!こんな(クズ臭がするけど)優しい先輩いないぞ!ヘタレ呼ばわりするな!」

思わず間に入って反論してしまった。

すると、狭山と俺との口論となる。

「あぁ?ヘタレをヘタレと呼んで何が悪い?」

「木元さんは(クズ臭はするけど)ヘタレじゃねえし!」

しかし、当の木元さんは「ごめん竜堂!こいつが絡むとめんどくさいから帰るわ、またな!」と、すたこら立ち去った。

…あぁっ!ホントにヘタレ?!…じゃなくて、何かすみません!

でも、狭山と二人きりにしないで!

あぁ…帰ってしまった。早っ!



「クックッ…」



木元さんがいなくなったのを見計らったのか。

狭山は急に静かになり、悪魔の笑いを漏らし始めた。



な、何だよ。



「クックッ…」

「っつーか、気持ち悪く笑ってんじゃねえよ!何しに来たんだおまえは!」



ちっ。なぜこの女はどこまでも絡んでくる?

木元さんが『めんどくさい』と、ヘタレに逃げたくなる気持ちも御察し致しますが。

あー!めんどくさ!


とても何かを言いたそうに、こっちを見ながら狭山は笑い続けている。

なぜ、俺のところに来るんだ。何が言いたい。



「あ、狭山さん…」



狭山と睨み合っていると、しずしずと間に入るように声を掛けてきた。

い、今来るんじゃない!



「おう、神田じゃねえか」



桃李!