「…でさ、あの後どうしたのか蜂谷に聞いても、何も答えないんだよな…『ひーみつっ』なんて言われてよー…すごいあからさま過ぎてビビったっつーか…」
「………」
「…おい?竜堂?どした?」
言葉が出ない…。
まさか、俺がうたた寝している間にそんなことが起きていたとは…。
まさか、俺が犬にエサをやっている間に、そんなことが起きていたとは…。
まさか、俺が夕飯後に、明日の朝食のためにパンダフルで買っておいた、姉のパンを横取りして食べていた間にそんなことが起きていたとは…!
桃李が眼鏡を外した経緯や、変身した経緯はわかった。
もうわかった。
ブラジャーじゃないものを着けて学校に来ていたことも、衝撃だったが、そんなことはもうどうでもいい。
苺さんの服を着ていたことも、どうでもいい。むしろ想像はついていた。
まさか、俺がこの桃李の変身の事実を知る前に、すでにもう弊害が起きていたとは…!
これは、怒りなのか、落胆なのか。
それとも、不安なのか。
いや、怒り8割…!
しかし、それは矛先不明の怒りだった。
『蜂谷、メガネのこと気に入ってんじゃねえかな』
まさか、まさか…蜂谷さんが。
このセリフが現実になってるだろうとは…!
出てきた。出てきた。
もうすでに出てきたぞ。
高瀬のようなヤツが…!
俺の大事な桃李に、セクハラ発言したあげく。
二人で帰宅だなんて…。
ゆ、許されないわ!
殺してやる!
しかし、蜂谷さんは部活の先輩。
嫌なヤツでも、ない。
むしろ、良い先輩。
キャプテン…職場でいえば、直属の上司みたいなもんだぞ。
安易に殺せない…!(…)
頭を抱える。
…くそっ。よりにもよって、何で蜂谷さんなんだよ!
もし大河原さんなら、即決で殺すのに!
あの、蜂谷さんだぞ?
何を考えてるかわからない男の蜂谷さんだぞ?
憎めないキャラだから、余計に…!
「竜堂、さっきからどした?恐い顔して」
「い、いや別に…すみません」
ちっ。この怒り、悟られてはいけない。
状況的に、そう判断してしまった。
これは…蜂谷さんだけに対するモノではないのだ。
蜂谷さんだけをクローズアップしてしまったが。
「本当、恐い顔してるな?…このジェラシー野郎が!バカめ!」
急に甲高い女子の声が間に割り込んできた。
後ろから急に大声で怒鳴られたため、反射的に体がビクッとさせられる。
この声…!



