『…えー?』
普段からにこやかな表情を崩さないでいる蜂谷さん。
その表情のまま、鼻で笑ったそうだ。
『えー?だって、こんなに可愛くなったんだもん。一緒に帰らなきゃ損じゃない?』
どストレートすぎる…!
周りのみんなもそう思っているのか、誰もが言葉を発していなかった。
依然、フリーズしたままだ。
『っていうか、メガネもメガネじゃなくなったし、どうせ可愛くなったんなら、男と帰った方が良くない?どうせなら家まで送るし』
何ですか!その無茶苦茶発言!
自由すぎる…!
場内は、すっかり静まってしまった。
『きゃーっ!若いっていいわね!アオハル!』
優里マネ母を除いて…。
高校生の恋愛イベント、何でもアオハル言えばいいもんじゃない。
『だから、ほら、帰るよメガネ!』
すでにリュックを背負っていた桃李の手に持っていた手提げのショッピングバッグを奪い取る。
『…あ、あ、それ…って、か、帰るって…あ、き、き…』
桃李も何が起こってるかわからないのか、挙動不審になっており、何語をしゃべっているか不明の状態だ。
しかし、そこを押しきられ、後ろから背中を押される。
『じゃあ、おつかれー!坂下ママ、ごちそうさま!』
『ち、ちょっと待ってよ!』
藤ノ宮律子が立ち上がったが、すでに遅く。
桃李はすでに玄関まで押しきられ、『靴履け!ほら!』と、急かされて連れて行かれてしまった。
ドアのバタンと閉まる音が響く。
帰ってしまった…本当に、二人で。
『本当に行っちゃった…』
全員、玄関の方を見たまま、唖然。
すると、狭山が急に大声で笑い始めた。
『あっはっはっはっ!…面白くなってきたぞバカめ!』
『さ、狭山さん何言ってんの!』
大声で笑う狭山に、藤ノ宮律子が反論している。
『この展開、どう転んでも面白いではないか!蜂谷が神田に手を出しても面白いし、そうでなくても面白いし、蜂谷と神田がくっついたらそれはそれで面白いし、蜂谷とあやつがバトルになっても面白いし…世の中面白いことづくしだバカめ!』
狭山は何を言ってるんだ…。
相変わらず意味不明だ…。
『もぉー…桃李のことは、そっとしておいて欲しいのに…今、すごく頑張ってるんだから…』
藤ノ宮律子が、こっそりとそう呟いていた。



