王子様とブーランジェール





『桃李、照れてるの?可愛いなぁー』

『ち、ち、違いますよ律子さん…あ、あ、あの人意地悪なんです…そ、そ、そう言って私からお金を取ろうと…ろ、ろ、ロマンス詐欺…』

『え。何言ってるの』

『わ、わ、わ、私が可愛いワケ、な、な、ないじゃないですか…こ、こんな天パ眼鏡…』



かなり警戒してるぞ…。

なのに、ガチバカなの?ロマンス詐欺って何?

可愛いって、言われ慣れてないのか。

もう天パ眼鏡じゃないのに、変身したこと忘れてる?



蜂谷さんは、そんな桃李を表情変えずにただ見つめている。



『可愛いって言ってんのに。で?Eカップなの?』

『またセクハラか!バカめ!』





それから、優里マネ母が夕食にラーメンやらジンギスカンやら、そうめんやら用意してくれたらしく。

総勢8名でテーブルを囲む。



『…えっ?!神田さん…自分で洋服買ったことないの?!』



優里マネがまた驚きの声をあげた。



『は、は、はい…お母さんが着てる洋服を着てます…』

『えぇっ!お母さんの服…信じられない!』

優里マネ、また頭を抱えている。

信じられない価値観にカルチャーショックを受けているようだ。

すると、隣に座っていた藤ノ宮律子が、桃李の頭を撫でている。

『桃李、今度一緒に買い物行こうね?似合うの選んであげる』

『は、はい…』

『り、律子ちゃん、その子、ちゃんと指導しなきゃダメよ!もう、女の楽しみ何もわかってないんだから!…あ、今日の残りのお金また持ってきて、今度は服を買いに行くんだからね!あと、雑誌読みなさいよ!』

『優里沙さん、桃李は私と買い物に行くんです!ダメ!』

『じゃあ律子と優里沙と神田、三人で行けばいいだろバカめ!…面白いからこの狭山エリ様も着いて行ってやるわ!』

『じゃあ、私もー!』


今度はみんなで買い物ですか…やれやれ。




しかし、楽しい時は過ぎ。

時刻は夜の8時を過ぎていた。



『あ、もうこんな時間…帰ります』



席を立ち、桃李は帰り支度を始めた。

『正晴に送らせるぞ?ゆっくりしていけ』

『いえ、やることあるので…』



すると、突然。

何を考えてるかわからない男が、ぶっ込んでくる。

不意討ちとは、まさにこのこと。



『…じゃあ、メガネ。俺と一緒に帰るか』



………。



この不意討ちに。

ここにいる誰もが、フリーズした。



一緒に…帰る?

蜂谷さんが?

桃李と?



『あれ。はっちー、ここから歩いて帰れるしょ。メガネちゃんとは家逆方向じゃない?』