「美少女?」
陣太は目を細めて立ち上がり、咲哉に連れられて行く。
「ホントホント美少女!ハシカン以上だぞあれ!来い!早く来いってば!」
「はぁ?一年の美少女っつったら、8組小笠原、1組鈴木羽菜…」
「とーりーあーえーず!見て!見てくれって!行こ!」
廊下に出ようとした二人だったが…。
「…おわっ!!」
二人揃って声をハモらせ、教室から出ずに立ち止まった。
「あ、来た…」
「え…誰」
「え?陣太も知らないの?」
咲哉や陣太だけではない。
その周辺にいたヤツらはだいたいフリーズしている。
知らない人が、普通に教室に入ってきた。
誰だ?おまえは?みたいな。
ツヤツヤしたストレートの肩下の長さの、毛先が緩く巻いてある髪をなびかせて。
色白の肌に頬がほんのりと血色が良いピンクで。
瞳は黒目がちでパッチリとしていて、顔の半分はあるんじゃないかっていうぐらいの大きさで。
鼻筋も程よく高く、唇もふっくらとしていて。
手足は細く、長く。
学校指定のジャストサイズの白いブラウスと、膝上丸出しのミニスカート。
…こんな女子、うちのクラスにはいない。
ここにいるヤツ、誰もがそう思ってるはずだ。
…だが、俺にはわかる。
背負ってるリュック、いつもと同じなピンクのあのバカデカいアウトドア用のリュックじゃねえか。
とうとう、ついに。
その姿で来てしまった。
こっちの存在に気が付いたのか、そいつはこっちを見てくる。
「か、か、梶くん、よ、よ、横川くん、お、おはようございます…」
そして、咲哉と陣太にペコッと頭を下げる。
頭を下げられた二人は、体をビクッとさせた。
「おはよう…って、何っ?!俺達のこと知ってる?知ってる人ぉっ?」
「…っつーか、おまえ…誰」
すると、そいつもビクッとしていた。
「か、か、神田です…」
その返答を聞いて、二人は動かなくなってしまった。
時を止める術か?
そして、俺の方も見ている。
「な、夏輝…おはよ…」
その、オドオドしたどもったしゃべり方は、見た目は変わっても、変わらないのか?
このっ!…桃李!
「…桃李おまえぇぇっ!眼鏡はどうした眼鏡はあぁぁっ!!」
ここぞとばかりに、俺の中で何かが爆発した。
眼鏡!
眼鏡…なぜ、無いんだ!!



