王子様とブーランジェール





街灯ポールにしがみついて離さない桃李。

糸田先生は、一度体から手を離し、がら空きになっている桃李の両脇を手でくすぐった。

「きゃっ!」

手中にハマり、あっという間に手を離す。

今の悲鳴、汚くなかった。桃李がかわいい悲鳴をあげた…。

しかし、糸田先生はその隙を逃さず、桃李の体を抱えて引っ張り上げる。

「あぁっ!」

あっという間に小脇に抱えられてしまい、糸田先生はずかずかとこっちにやってきた。

なんという力…!

40過ぎのおっさんが!でも、いい体格してるしな。




俺達の前にやってきた、糸田先生。

みんな、気持ち後退りしている。

女子生徒を小脇に抱えて登場なんざ、そりゃあみんなビックリだ。

そして、小脇に抱えた桃李を、俺達の前でポイッと投げた。

「ぎゃっ!」

投げられた桃李は、うつ伏せで滑り込んでいる。

ヘッドスライディング!

そして、そのまま動かなくなってしまった。



「…蜂谷!坂下!」



キャプテンとチーフマネージャーを呼ぶ先生。

同時に、うつ伏せになった桃李の背中にどっかりと座り込む。

桃李がまたしても「ぎゃっ!」と悲鳴をあげた。

「せ、先生…それはいくらなんでも可哀想じゃ…」

呼ばれたキャプテンの蜂谷さんは、その無惨な光景に口を出した。

「バカかおまえは!このヘタレ女は、いつ逃げるかわからないからなぁ?!こうでもしねえと逃げられんだよ!」

ヘタレ女…。



すると、うつ伏せになったまま、桃李が呟いている。


「…せんせえ、おもたいです…ころさないで…しにたくありません…」

「殺すまではしないが、半殺しにしてやる!」

半殺し…!



…桃李。久々の展開だが。

おまえ、何やった?

糸田先生に何をしたんだ!

相手が悪すぎる…!



「…あれ?神田さんじゃないの?!どうしたの?!」



同じく呼ばれて赴いた優里マネ。

面識のある女子生徒が、糸田先生の下敷きになっていて、ビックリしている。



「おう、おまえら揃ったか」



おまえらどころじゃない。

この光景をサッカー部全員が見ている。

変な緊張感を持ちながら。



「…今シーズン初、ペナルティ入部だ。期間は2週間。坂下に任せるぞ」



ぺ、ペナルティ入部?!