王子様とブーランジェール




「まだ道具残ってる?」

「まだあるんじゃねえか?」

と、圭織と話してると、倉庫から大声で話しかけられる。

「ちょっと圭織!手伝ってー!」

あゆりだ。やっぱ、道具重たいんじゃないか。

しかし、隙を逃さず突っ込まれる。

「夏輝!練習始まるから早く!」

「わ、わかったわかった」

ったく、何急いでんだか、あゆりのやつは。



カリカリと怒ってるマネは、林あゆりといって。

なんと…まゆマネこと、林まゆりさんの実の妹。

姉妹でマネージャーって、どれだけ仲良し?…でもないんだけど。

いつもケンカしてるしな。

俺とあゆりは入学前からの知り合い。

受験のために通っていた塾が一緒だった。




すると、2年マネ二人もこっちにやってきた。

「もう始めるみたいだから、行って!」

「先生、今来るみたい!」

何っ!糸田先生来るのか?

こんな初っぱなから?珍しい。

いつも練習中盤にブラッとやってくるのに。

道具を2年マネにお願いして、集合場所へと向かう。

みんなだいたい来てるな。




しかし、様子がおかしい。

先生来るというのに、みんな整列しておらず。

全員、同じ方向を呆然としながら見ていた。

咲哉たちも。木元さんも。

部員やマネ、みんなが。



「…どうした?」

部員の群衆の中にいた咲哉に声をかける。

咲哉は「あれ…」と、その方向を指差した。

疑問を持ち、視線を向ける。




しかし、そこは。

思いもかけない事態となっていた。




(…はぁっ!?)




「…何やってんだおまえは!そこを、そこを離せ!」

「嫌だ嫌だぁーっ!し、し、死にたくないぃーっ!た、た、た、助けてぇーっ!!」

「ふざけるのもいい加減にしろ!観念したらどうだ!」

「やぁだぁあぁーっ!おうちに帰るうぅーっ!た、た、た、助けてぇーっ!!」

「こんなヘタレなヤツに助けなんか来ないぞ!…神田コラァ!」




サッカー部顧問であり、生徒指導主任の糸田先生が。

グラウンドの傍にある街灯のポールにしがみついている女子生徒を、必死に引き離そうと、怒鳴りながら引っ張っている…。




問題は、その女子生徒だ。

俺の中での、永遠の話題の人物。




(…桃李ぃ?!)




な、なぜおまえがこんなところに!

学校ジャージ着用で!




それは、波乱の始まり…。