あんなことがあっても、おまえたちはまだ一緒にいるのか。

宿泊研修前と、至って変わりがない。




夢のようなひととき…。

…と、言えば、そうかもしれない。

久々に桃李と昔みたいに話をして、浮き足だってたのは言うまでもない。

学校行事はあまり得意じゃないが。

宿泊研修、よかったよ…。




「桃李ー!」



向こうから、黒沢さんの声がした。

「りみちゃん、何?」

「何か、センパイ呼んでるよー」

さっきまで椅子に座ってクロワッサンを食べていた黒沢さんだったが、いつの間にか出入口付近に立っていた。

こっちにいる桃李を手招きしている。




しかし。

そこにいた人物を見て、イラッとした感情が膨れ上がった。




…な、何だと!

なぜ、おまえがここに…!




出入口の向こうの廊下に立っていたのは。

ゴリラ…。

…ではなく、ゴリラのような3年。

高瀬…?!




先日、売店で桃李にサンドイッチを踏みつけられてガチギレし、桃李に手を上げた、高瀬!

俺に一捻りされた、高瀬!



なぜ、一年の教室に!



「…え?センパイ?」



そこにいる高瀬の存在に気付いた桃李。

首を傾げている。

しかし、黒沢さんに「早く!」と急かされ、しぶしぶと黒沢さんのもとへ向かった。



「ま、待て!」



思わず引き止める。



「え?」

「俺も一緒に行く。あいつ、また急にキレ出すかもしれない」

「あ…うん」



女に手を上げるとんでもない、男の風上にもおけないヤツだぞ?

この間、桃李がお詫びの品を持っていったが、また難癖つけるとかじゃねえだろな?!

冗談じゃねえぞ?許されないわ!




桃李より前に出て、俺が先に高瀬と接触する。




「あーら、ゴリラ…じゃなかった、センパイ、お久しぶりですぅー?」

「り、竜堂?!」



あの時と同じく、ふざけた態度をかましてやった。

高瀬は俺の登場に嫌な顔をする。

そりゃ、俺の顔なんか見たくないよな?力負けした相手の顔など。



「センパイ、一年の教室に何の用事ですかぁー?俺に何の用ですかぁー?」

「お、おまえじゃない!神田さんに用事があるんだ!おまえじゃない!」

「えー?何の用ですかぁー?また、ゴミ箱でも振り上げるつもりですかぁー?ちなみにゴリラの檻はあっちですよー?」

「ふ、ふざけるな!」

…わざとふざけてんだよ!このゴリラ!