王子様とブーランジェール




「とりあえず、そこで少し休んどけよ。俺、トイレ行ってくるから」



グロっている二人を理人に任せて、一人トイレに行く。

だが。

トイレから出てきた時。

もう一人、同じ状況でグロっているヤツがいた。



(…え)



トイレの数メートル手前で。

一人、力尽きて、倒れている。



「た、たすけて…具合わるい…」



髪を縛っていたので、一瞬わからなかったが。

昨日、絶壁から滑落した、今話題の人物だ。



「…桃李ぃ?!おまえ…!」



なぜ、トイレの手前で倒れている!

何があった!



「な、なつき…」



俺の声に気付いたのか、ゆっくり起き上がる。

しかし、とっさに口元と胸を押さえていた。



「ど、どうした!」

「は、吐きそう…」



このシチュエーション。

前にもあった。デジャヴだ。



小学校の修学旅行で、この遊園地に来たことがある。

ヤツは、俺の双子の姉に連れられて、ジェットコースターに無理矢理乗せられていた。

三回乗った結果。

桃李は、通路の隅で、小間物屋を開いた。



こいつ、ジェットコースターに乗ってしまったのか…!



「もうダメぇ…うっ」

「…吐くなら、トイレで吐けぇーっ!!」



歩けなくなっている桃李を無理矢理トイレまで引っ張っていく。

女子トイレに押し込み、俺はトイレの前で待機した。

まったく…同じ失敗を繰り返してるんじゃない。



…そういえば。

あの時、桃李の背中、擦ってやったよな…。

ゲロは衝撃だったが。

『桃李おまえぇっ!ダメなら乗るんじゃねえ!』

と、キレた。

そして、桃李の背中擦りながら、姉にもキレた。

『おまえの勝手で無理矢理乗せてんじゃねえよ!』って。

その後は、姉弟ゲンカとなった。



…昔のことを思い出したの、久しぶりだ。



あの時すでに、俺は桃李のことが大好きで。

ゲロの介抱も俺がしてやらないとダメだって、思っていた。

あの時からすでに、危なかしくて、一人にしておいたら、きっとどうにかなってしまう。

こいつの傍にいてやらないとダメなんだ。

何かあったら、すぐに壊れてしまいそうで。

だから、俺が守ってやるんだよ。



子供ながらに、もう、そんなことを思っていた。



っていうか、桃李も相変わらず、苦手なら苦手だと言え。

無理して乗るんじゃない。

まったく…。



俺も桃李も相変わらず、だな。