王子様とブーランジェール




敵…じゃないのか?



「…なら何なんだよ!実は言葉間違えてんじゃねえのか?!『おまえは俺の敵じゃない』の間違いじゃねえのか!…松嶋コラァ!」

「いやいやいや。間違ってない。俺はダンナの敵じゃない。で、合ってる」

「じゃあ、それはどういう意味だよ!」

「まあ…うーん。すぐにわかるよ」

「はぁっ?!」

「っていうか、敵は他にもいっぱいいるだろうから、そっちを注意した方がいいんじゃない?『外には七人の敵がいる』と言うでしょ?」

「…んだと!」

「まあまあまあまあ」

松嶋は、宥めるように俺の右肩をポンポンと早く叩く。



「…まあ、楽しみにしてて?」



「じゃっ!」と、手を振って、笑顔で俺のもとを離れる。

帰りにまたしても、自動販売機で缶ビールを買って帰っていった。

2本目かよ!

大概にせい!



いったい何なんだ、アイツは…。








しかし、何が何だかわからなくなってきたぞ。



松嶋は、俺の敵じゃない。

…って、どういう意味?



『まあ、桃李の味方ではあるけどね?』



ますますわからない。

あいつの立ち位置。



しかし、話の流れからいって、恋仲というわけではなさそうだ。

桃李も、あれは…否定でいいんだよな?

あの『バカなことばかり言ってると、怒るんだからね!』は、違うって意味でいいんだよな?

あぁ…かわいかった。

バカと言われて、あれほど嬉しいことはなかったぞ。

…じゃなくて、おい。



だけど、松嶋は…桃李を抱き締めてるんだぞ?

これでも、気がないって言えるのか?

どういうつもりのハグなのかは、松嶋だからよくわからんけれども。

本当に、ますますわからないな。



『…まあ、楽しみにしてて?』



謎が多い…。

何を楽しみにするんだか。



…はっ!まさか!

そう言って、うまいこと言って油断させて、後からやっつけられるという手口か?

それは、聞き捨てならない!




しばらく考えていたが。

何ら結論は出ない。

時間の無駄なような気がする。

や、やめよう…。



ため息をついて、エレベーターから降りる。

コーヒー1本、お茶2本持って、理人の待ってる部屋に向かうことにした。

理人に、遅かったけど何してた?とか追及されそうだ。

アイツ、こういう勘は鋭いからな。

あぁ…。