王子様とブーランジェール





風呂から上がって部屋に戻ったが、着いたとたんに飲み物をきらしていることに気付いた。

「俺、飲み物買ってくるわ」

荷物を置いて、部屋を出ようとすると理人が小銭を俺に渡してくる。

「じゃあ、俺のも頼むわ。ミルキング」

「もう9時過ぎたから売店やってねえよ。自動販売機だ」

「じゃあ、お茶でも何でもいいや」

「金はいらねえ。おごり。さっきのお詫び」



そうして、エレベーターで一階に降りる。

さっき、喫煙所の自動販売機に、新発売の飲んでみたいコーヒーがあった。

それを買いに行くために、わざわざ一階まで降りる。



エレベーターを降りて、少し歩いたところに喫煙所があった。

喫煙所とは言っても、フロアの隅にベンチと灰皿が置いてあるだけの、分煙されていない簡易なものだ。



しかし、そこには…。



(うわっ…)



風呂上がりでタオルを首にかけたまま。

一人でベンチに座っている。

髪を洗ったからか、セットされておらず、一瞬解りづらかった。



松嶋だ…!



「…あ、竜堂のダンナじゃん」



そう言ってヤツは、缶ビールを飲んでいる。

…え?缶ビール?!



「おまえ、アルコール…」



思わず口に出してしまった。

この学校行事の真っ最中に、アルコールだ?!

恐いものナシか!

こんなところで堂々と!

百歩譲って、部屋で飲め!



「風呂上がりはやっぱりビールっしょ!大丈夫、一缶だけ!」



手に持っている缶ビールをイッキ飲みする。

そして、空になった缶を少し遠くにあるゴミ箱にぶん投げた。

缶は見事にゴミ箱に入る。




「ダンナも飲めば?…あ、酒で過ち犯してるから、やめた方がいいか」

「うるっせえな!」



こ、こいつ…!

その話、やはり知ってるか!

っていうか、久々に聞いた感じで、少し忘れてた…。



かなり気分悪いぞ。

あまり関わらないように、シカトして、目的のアイスコーヒーを買う。

ついでにお茶を2本ほど買った。



さっきの桃李の転落事件のこともあるし…。



関わらないように、とは言っても。

聞いておかなきゃいけないことがあるのに、気付いた。




「…松嶋」

「んぁ?」

ちっ。マヌケな返事しやがって。




「…おまえ、桃李に何をした?」

「へ?」

「何で、桃李は絶壁に落ちていったんだ?何かしたんだろ」