「で、でも…一緒にいてくれるんでしょ?す、好きじゃなくても…」

「…そうだな。まあ、俺のこと好きになると思うし?俺のことしか考えられなくなると思うよ?」



…どこまで余裕をみせるんだろう。この人。

普段、この根拠がなさそうな余裕綽々感が腹立つのに。



でも、今はそれに頼りたいと思った。



「…じゃあ、蓑島くんのことしか考えられなくして」

「………」

「瞳真のこと、忘れさせて!」



瞳真とのこと、今までの瞳真との思い出や想いが過るが。

今のままの私じゃ、それは全てツラい思い出になってしまう。

ボールを追いかけて一緒に練習に明け暮れた日々も、乗り越えて掴んだ栄光も。



そんなの、嫌だ。





「…なんか、エロいな?俺のことしか考えられなくして!とか、忘れさせて!とか」



ブッと失笑している。

人が真剣にお願いしてるのに、このっ!…と、思ったけど、こっちがお願いしている身なので、文句を言いたい気持ちはグッと堪えてみる。

でも、ちょっと恥ずかしくなってしまい、俯いてしまう。

すると、足音が聞こえてきて、汚れた野球のトレーニングシューズが視界に入ってきた。

顔を上げると、蓑島くんが私の目の前に立っている。



「…喜んで?俺の愛しいお姫様?」