背中を叩かれるのを待っていたけど。

私の背中を襲ったのは、タッチする掌の衝撃…ではなかった。




(えっ…)




後ろから、腕に包み込まれる。

背中に温もりを感じて、ハッと気付いた時。

体を包んだ両腕は、私の体をギュッと抱き締めた。



後ろから抱き締められて…。




「…えっ。えっ!」

「行っておいで」

「蓑島くん…?」

「俺は幸せ祈ってる。星月の幸せを」




今一度、ギュッと強く抱き締められた後、すぐにフッとその力は抜ける。

でも、温もりはまだ残ったままで。

それは…優しくて。




そして、トンと軽く背中の真ん中を叩かれる。

蓑島くんらしく、優しく。



「………」



振り返ると、手の感触と同じような。

優しくふわりとした顔つきの蓑島くんが…いた。




目が合うと、私の目を見つめて頷いている。




行ってくるよ。

ありがとう。



頷き返して、再び前を向く。

…でも、数歩進んだところで、また振り返ってしまう。




「蓑島くん!…ありがとう!」