野球やめよっかな。つまんねー。
そういったことを、蓑島は口にするようになる。
『…インドに留学してクリケットの選手になるって。現実味のない話でしょ?』
『………』
やばい。どっかの誰かと一緒だ。
ここ、思考同じでどうするんだ、俺ら。
『巷では悠介は有望選手だったし。私だって、悠介の野球しているところ、ずっと見てたかった。やめないでほしいと思ってた。でも…』
…でも、蓑島はすっかり野球への情熱を無くしていた。
それは、モンペアな上級生の親がいなくなっても変わらず。
卒団までは絶対にやめない、という親との約束だけで野球をただやっていた感じだったという。
蓑島に野球をずっと続けてほしいと思っている横川は、そんな覇気のない蓑島に胸を痛めていた。
…ところが、小六の夏のある日。
蓑島は野球から帰ってきて、なぜか笑顔だったという。
『ゆら、聞いてくれ。今日ホームラン打った』
『えっ!…今季初!』
自分のことのように喜びながら、見に行けばよかったと悔しく思いながらも。
隣でバットをにぎにぎと握りながら、思い出し笑いをする蓑島がいた。
『ホームラン、気持ちかった…また打ちてえ』



