『…親?』
横川は頷く。
『正確には、悠介にレギュラーの座を奪われた上級生の親よ。監督のめんこちゃんだから試合に出させてもらってるとか、贔屓だとか、堂々と文句を言ったり監督に直訴するの』
『モンペア?うわ…』
『私もそう思うわよ。監督の采配にまで文句つけたり陰口叩いたり。…選手たちは一緒にやってんだもん、悠介の実力はわかってるから、負けじとなりながらも切磋琢磨して楽しくやってた。…何もわかってないのは、親だけ』
そして、蓑島が試合に出ると。
その上級生の親たちはやんややんやと文句をつける。
息子のチームメイトにも関わらず、蓑島に直接ヤジを飛ばしたり。
それはもう、カオスだったそうだ。
もちろん、直接ヤジられて蓑島が気が付かないワケがない。
次第に蓑島は、観客である親の顔色を気にするようになる。
プレイも気持ちもどんどん萎縮していき、試合成績も悪くなり笑顔も消えていく。
そして、どんどん荒くれ者になっていく。
プレイが思うようにいかないと、イライラしてベンチでモノを投げたり、器物損壊。
ヤジられる度に、試合中にも関わらず勝手にマウンドを降りてしまう。
グランドから出ていってしまうこともあった。



