だけど、ここは平静を装って接したい。

さっきの感情は胸の奥に閉じ込めて、口を開く。



「どうしたの?何か道具足りなかった?」

「あ、マーカーもう少し欲しい」

「ごめんごめん」



彼の顔を見ないように背を向けて、マーカーのあるカゴを手に取って渡す。



「ごめん、これ頼むね?」

「…あ、星月」

「何?」

「…今日、蓑島と話した?」



えっ…。



「な、何で?」

急に蓑島くんの名前が出て来て、動揺しそうになる。

何で蓑島くん?

「いや…俺のこと、何か言ってなかったか?」

「…え?いや、別に」

「…そう。ならいい」



あ…そうか。

昨日の記憶が甦る。





『…お?何だ何だ。水口もラブラブしてんのか?あ?…明日、星月に言っとくー!』




ひょっとして、本当にチクられたと思ったとか?



いやいや、チクるもなんも、私そこにいた。

…とは、言えない。




…何で、それを気にするの?



もしかして、美優と会っていたこと、私に知られたくなかった?

部員とマネの恋愛ってことになるもんね。

特に、マネの私に知られたら、気まずいだろうね。



自分の勝手な詮索の結果に、イラッとしてしまう。