そっちが、蓑島が先にケンカを売ってきた。

何か知らんが、蓑島の琴線に触れたらしい。

でも、そんなの知るか。

あいにく、売られたケンカは買う主義なんで。

悪いのは俺じゃない。

俺じゃない。



反省の色、全くなし。






『…で?…どっちが先に手を出した?このヤロー』



事務用のキャスター付きの椅子に、腰かけて足を組む糸田先生。

不機嫌に俺達を睨みながら、問いかける。



その問いに、一斉にお互いをビシッと指差し合う。

先生は、顔をひきつらせた。



『おいおい。双方言い分違うってどういうことだ。意地の張り合いを見たいんじゃなくて、真実を知りてえんだよ。俺は』

『………』



糸田先生も刑事か探偵か?

真実はいつもひとつ!みたいな。



その真実を知られるのは、ぶっちゃけ都合が悪い。

まさか、女を巡って口論なんざ…我ながららしくないことをしたと思う。

そこが唯一の反省点だ。



沈黙を保ってはいたが。

その沈黙を保っていられないタチなのが、今隣に座っている、この男だ。




『…先生方っ!』



急に顔をガバッと上げて、声を張る。

ここにいる先生二人と俺の体をビクッと震わせた。