『…離せ!』
腕を払って振りほどこうとしたが、ほどききれずにまた掴みかかられた。
その手に、更に力を入れられる。
何なんだ!
…なぜ、俺は蓑島に怒られねばならない?!
よりによって、他人に一番触れられたくない部分を、なぜ無理矢理抉られなければならないんだ!
『おまえに…おまえに何がわかるんだ!』
蓑島の挑発にまんまと乗ったカタチとなり、俺もこの男のTシャツの胸元を乱暴に掴みあげて、自分の方へと引き寄せる。
お互い掴み合っている状態となった。
蓑島、部外者のおまえに何がわかる?
あの時、俺が自分の非力さを恨んで涙したことも。
わかっていないはずなのに、わかったようなフリをしやがって…。
…許されない!
すると、蓑島はバカにしたように「はっ」と短く笑う。
『…わっかんねぇよ。ヘタレた男の美学なんてよ?』
『は?ヘタレ…!』
『叶わないから密かに想い続けるとか、おまえが幸せならそれでいいとか、そんな幸福論、全っ然わかんねえ!…そんなもん、ただビビってるだけだろうが!』
『あぁ?ビビってる?…んだと!』
『大切な人は、必ず自分の手で守る。…それが、男ってもんじゃねえの?!』



