『…もしその時、おまえじゃなくて俺が傍にいたのなら、こんなことにはなってない。星月がみすみすとサッカーを諦めるようなことには、なってねぇんだよ…』
驚いた。
なぜ、この男は知ってる?
それは、俺の悔やむべき過去で。
よりにもよって、この男に躊躇いもなく抉られる事になるなんて。
何もかもを見透かしているかのように。
『人に希望を与え幸せに導いている、その本人が全てを取り上げられて、ズタズタに傷付いて、孤独に泣いてました…って、そんな話あるかよ!』
興奮したのか、徐々に声を荒げた蓑島に、Tシャツの胸元を乱暴に掴まれて引き寄せられる。
近付いたその表情は、鋭いナイフのような目付きのまま、怒りに満ちているような気がした。
『おまえも誰も傍にいてやらないんだったら…だったら、俺がやるんだよ!傍にいてやるんだよ!』
その迫力に、一瞬怯むが。
冷静になって、この状況を見ると…なぜ、蓑島が怒ってるのかはわからない。
でも、なぜ俺はこの男に怒られねばならないのか。
そんな事が頭に過ると、だいぶイラッとした。



