何もわかってない…?
どういう意味だ。と、口にする間もなく、今度は蓑島にじわじわと畳み掛けられる展開となるのだった。
『…おまえは、星月が今までどんな思いをしてきたのか、わかってんのか…』
星月が?
…と、考える間も与えられない。
『…ずっと前だけを見て突き進んでいて…ふと立ち止まると、周りには誰もいなかった…』
目が…鋭く、視線が突き刺さってくる。
まるで、 凶器のように。
そんな視線を合わせられた瞬間、不覚にも少し怯んでしまった自分がいた。
『…その上、怪我でサッカーをも失って、一人で泣いていたんだぞ…?誰にも傍にいてもらえず、結局一人じゃ這い上がれなくて何もかも失ったままで…』
(なっ…!)
何故だ。
なぜ、蓑島がその話をする?
入学前の、蓑島が知るはずもないその話を…?
『…なぁ、水口?』
ゆっくりと詰め寄られると同時に、左肩に手を添えられ掴まれる。
『…んだよ!』
『おまえ、何やってたんだよ…』
『あぁ?』
『…あの時、星月の一番近くにいて、おまえ何やってたんだよ。傷だらけになって泣いている星月を、傍で支えてやろうとは思わなかったのか』
『な、何でその話を…!』



