そんな感じで二人でグランドへ向かう。
その道中で、部員たちとちらほら出くわす。
「あーっ!美優マネ、また重そうだ!…持ったげるか?」
向こうにいるのに、こっちの存在に気付くと走ってやってくる。
伊野くんだ。私と同じクラスの。
昨日、美優のジャグを持ってあげていた。
伊野くん…恐らく美優のことを気に入っている。
「…あ、あ、大丈夫っ!一人で持てるよ?」
「マジ?手震えてるじゃん!…なぁ、瞳真?」
(えっ…)
伊野くんの振り向いた方向には、タオルを手に持った瞳真が立っている。
いつの間に!
こんな近くにいたんだ。
瞳真と美優。昨日の二人が近くにいる。
胸の奥が、ざわざわとしてきた。
瞳真はこっちを見ている。
大きくて睫毛の長い、綺麗な瞳で。
それだけでもかなり意識しちゃうんだけど…。
…見ているのは、私じゃない。
美優だ。
「…頑張って運べ」
クールな瞳真は、表情を崩さず。
それだけ言い放って、その場を去っていく。
先にグランドへと向かっていった。
「…う、うん!」
その時。
美優の顔が赤らんでいて。
瞳真の一言で、笑顔になった。
そして、また「ふんっ!」と力を入れて、ジャグを持ち直して運ぶ。
足取りがさっきより速いと思ったのは、気のせいなのかな。
…随分、張り切ってるね。
(………)
そりゃ、告白して好きな人と付き合うことが出来たんだもん。
頑張れるよね。



