「あ、門脇部長」



席を立って「お疲れさまです」と頭を下げる。

門脇部長だ。サッカー少年団の部長さん。商店街のお寿司屋の店長。

少年団にいる間はずっとお世話になった。卒団後も道で会えば声を掛けてくれて、何かと気に掛けてくれている。



「最近親父見掛けないけど元気かー?」

「…あ、親父、いつも夜遅いです。たまに帰ってきません。出世したみたいで出張も多いです」

「ほぉー。働き盛りだな?…そういや、インターハイお疲れさん。凜と夏輝に続いておまえも高校で全国かー。秋はこれからか?楽しみだな」

「はい。頑張ります」



門脇部長と、しばらく立ち話をする。

とても気さくで話しやすいおじさんだから、口数が少ない俺でも話し込んでしまう。



「…お。そういや星月は元気にしてるか?」

「あ…」

「あれ。高校も部活も一緒だろ?」


門脇部長にとっては何気ない一言なのだが、その名前が出てくるとつい言葉を詰まらせてしまう。



まさかこの1ヶ月いろいろあって、その話をするためにここにいる。

なんて知れたら、このクソオヤジには間違いなく冷やかされる。



「その格好、部活の帰りなんだろ?星月は?」