「…あ、おはよ」
「…おっ、お、お、おはよ…」
正面玄関口を出た途端、出くわしてしまった。
渦中の人物、瞳真に…!
…ああぁぁっ!
カバンを肩にかけており、たった今来ましたみたいな様子だけど。
どんな姿だろうが、今、彼を視界に入れるのは動揺するでしかない。
語尾がほとんど消えている挨拶を一言だけかけて、目も合わさずにその場からダッシュした。
「あっ…」
まずい。まずい…!
あのキスを思い出しちゃう!
現在普通に接するなんて、無理!
現在地から一直線に倉庫にダッシュして、震える手で鍵を開けた。
それから、朝練の準備中も瞳真を視界に入れないように…。
「瞳真お疲れー」
「おまえギリギリだぞー。ヒヤヒヤするな」
「遅刻はしてないし」
「家近いんだから、あと5分早く出ろや。それだけでいいんだぞ」
伊野くんたちと話している声が聞こえれば、その場をさりげなく離れ…。
しかし、越後谷くんがよけいな一言を。
「せづマネと家近いんなら、今度から一緒に来いや。せづマネは早いぞー?だいたい一番乗り」
…えっ!
反射で思わず体をビクッと震わせてしまう。
…私の名前を出さないでぇぇっ!



