怒るほど、そんなに聞きたかったの?
…そんなこと、聞いてどうするんだろう。
だからと言って、キスしてこなくたって…。
初めてだったのに…。
…初めてのキスが、まさかこんな状況でとは想像すらしなかった。
付き合ってるワケじゃないのに、他に彼女がいる人に無理矢理されるなんて。
しかも、あの瞳真と。
…確かに、好きだったけど。
昔は、初めての相手がもし瞳真だったらな…なんて、胸をドキドキさせて想像していたこともあった。
でも、今は。
それは、素直に喜べない。
私を好きでいてくれてるのかわからない人と、するだなんて。
しかも、あんなに何回も…息出来なくて死ぬかと思った。
しかも、何?あの手慣れてる感。
ぎこちなさ全然無し。
…そうか。瞳真は今までに彼女が何人もたくさんいたんだ。
今だって、美優がいるし。
そういうことも、お手の物なんだ。
私も、その通りすがりの一人、みたいな。
私も私だ。
キスされてる時、『初めてじゃないような気がして…』なんて思ってしまった。
紛れもなく、あんたはキス初めてだよ。いかにも知ってるような調子に乗ったことを言うんじゃない。
…あ。
そうだ。
瞳真と二人で部室にいたの…美優に見られていたんだった。
あれ、ドアをノックされたから気付けたけど、もしノック無しにドアをガバッと開けられてたら…!
修羅場…!



