…生まれてこのかた、キスの味を味わったことのなかった私は。

友達の興奮したノロケ話や、マンガやドラマを元に想像し、夢を見る。



自分の、初めてのキスを。



いつ…高校生ぐらいかな?それとも卒業してからな?

どこで…誰もいない夕暮れの教室?それとも彼の部屋?




どんなキスをするのかな?

いやいや、初めてだから。

超照れまくりで、唇が触れたかどうだかっていうレベルのものでしょ。最初は。

小鳥のようなキス?

歯なんてぶつかって、笑い話になるの。



誰と?

…誰になるんだろう。

私の初めてのキスをする人。

やっぱり…私の初めての彼氏とかかな。



…少なくとも、当時私が想いを寄せていた。

他に彼女のいる瞳真ではない。

悲しくもあるけど…そう思っていた。





…だけど、蓋を開けてみると、どうだろう。




たった今。

夕暮れの教室…ではなく、電気が付いた物だらけの狭い部室の中で。



小鳥のようなキス、とは言い難い。

突然の力強いハグと。

降り注がれるかのごとく、何度も繰り返されるキス。




まさかの瞳真と…。




「…や、やめっ…」

「嫌だ」