ふと見上げると、すれ違いざまに目の前にジャージ姿の瞳真がいた。
向こうも気付いてお互い立ち止まる。
「瞳真、まだいたの。自主練?」
「…いや。早霧谷さんとしゃべってた。そっちこそ、何持ってんの」
そう言って、私の持っている箱を覗き込んでいる。
「ボールクリーナー?…マーカー?」
「この間注文した備品。先生今頃持ってきて…」
「ふーん」
「じゃ、お疲れ」と、歩き出そうとすると、持っていた箱がひょいと持ち上がる。
「…あ、ちょっと!」
「俺が持ってく」
箱はすでに瞳真の手の中にあった。
「い、いいよ!私持てるから!」
「案外軽いな。で、部室?」
私の話を聞かず、瞳真は箱を大きい段ボール箱を持って、先に部室の方へと進んでしまう。
…もう。
この間の帰り道送ってくれた事といい。
今さら、女子扱いされたって…。
…なんて、思いながらも。
照れくさくて、胸をキュッとさせてしまう自分がいるのは何故なんだろう。
そして、考えれば考えるほど、顔を熱くさせてはしまうのは、何故なんだろうか。
「…星月!鍵!ドア!」
瞳真はすでに部室の前にいる。
あ、部室、鍵かけたんだった。
「…あ、ごめん!」



