…結局、蓑島くんは四時限目の間には帰ってこなかった。
授業も終わり、昼休みになる。
お弁当を食べ終わり、クラスメイトがそれぞれ捌けかけている時に。
蓑島くんは帰ってきた。
「み、蓑島!」
「おまえ…!」
彼の名前を呼ぶ伊野くんの声を聞いて、初めて気付く。
その方向を見ると、みんなに手を振りながら教室に入ってくる彼の姿があった。
「みんなー。迷惑かけてごめーん」
いつものスマイルを見せながら、みんなのところに足を進めている。
「蓑島!おまえ何やってんの!」
「大人げないことすんなー」
「やーやーごめんごめん。十分反省しております親方!」
「親方いいからよー。頼むわ蓑島ー」
「了解セニョリータ!愛してマスカット!」
「何だかテイストバラバラだな」
いつもの蓑島くんだ。
不調というカンジではなさそうだ。
「…お。悠介だ」
「蓑島くん、四時限目いなかったよね?どこ行ってたんだろう」
「愛してマスカットって何なんだか…」
その光景を横目に、傍にいる斗弥子と彩里が呟く。
私は…無言でいた。



