蓑島くんには、傍にいるべき人が他にいて。
それは、私じゃないから…。
言わなきゃ…言わないと。
別れを…。
「み、蓑島くん」
「…ん?何?」
「い、今…いい?」
「…どした?」
優しく見つめてくれる、笑顔。
そこから離れるのは、気持ち淋しく不安になるけど。
…でも、ダメなんだ。
「は、話があるの…」
お互いのために…ううん。私のこれからのために。
「話?」
「う、うん…」
「じゃ、こっち」
水呑場から離れて、二人並んで校舎の壁を背にする。
私はカバンを足元に降ろした。
「どしたの?そんな真剣な顔しちゃって」
「………」
顔に出てるんだ。私の心境が。
これはもう、率直に話すしかない。
ごまかしなんてきかない。
少しばかりの勇気を出すために。
拳を降ろしたままグッと握る。
「蓑島くん、私、もう大丈夫だから…」
「………」
「…終わりにしない?…この関係」
絞り出した声は、なぜか震えていた。
「………」
蓑島くんは、目を見開くのみと、少しびっくりした様子を見せていたが。
いつの間にか笑顔が消えていて、その眼差しは真剣なものとなっている。
ひょっとしたら、こんな蓑島くんの表情を見るのは初めてかもしれない。



