「ひえぇぇぇ…」
彩里のうめき声が聞こえた。
まるでホラー映画でも見たかのように。
「…え?…そしたら、試合の後では横川さんを腕に抱いたまま、星月に『あ、そうだ…』とか『お疲れ!』とか言ってたの?」
「うん…」
「ぎゃー!…で、自宅にお呼ばれされたにも関わらず、星月は御客扱いで放っておかれ、向こうは横川さんを嫁のように顎で使って一緒にいて…」
「言い方悪いけど…そう、だね」
「ぎゃあぁぁ!な、何それ。いや確かに、星月はお客様だからおにぎりを握らせたりパシリにするのは変だとは思うけど…その嫁っぷりを見せられるのは、ちょっと…そりゃ、どっちが彼女だかわかんなくなるよね…」
「………」
改めて整理すると…泣けてくるけど、バカバカし過ぎて泣けない、もう笑うしかない、みたいな。
何だか、複雑な心境だ。
だけど…私が一番ショックで引っ掛かっているのは。
菊乃さんの話だ。
《二人お互い、無くてはならない、支え合っている存在ってのは、わかってるんだけど…》
《二人には、私達大人にはわからない、見えない『絆』っていうものがあるのは、百も承知なんだけどね?》
《悠介とゆら、お互い一緒にいるのが、お互いにとっては一番楽だともわかっているんだけどねぇ…》



