ここは、公共の場、バスの中。
身を隠すように、気持ち屈んでこそこそと話す。
『それはいいけど!…あんた、悠介んち行ってたの?!…あのねえっ!』
「ご、ごめん…報告なしに」
『いや、いいんだけどさ。…で?どうした?』
「あ、あの…」
『ん?』
「い、いや…」
斗弥子と話をしたくて、聞きたいこともあって電話したのに。
いざ、話そうとすると、何から話していいかわからなくなってしまった。
『…何かあった?』
逆に質問されてしまう。
なかなか話し出さない私に、何かを察したんだろうか。
「…いや、何かあったワケじゃないんだけど、感じたというか…話を聞いてほしかったというか…」
『…今どこ?』
「バスの中…帰ってる最中」
『今から行こうか?そっちに』
「え?わ、悪いよ。それに、カレ…広海くんとデート中なんでしょ?」
斗弥子には、同じ中学の一つ上の先輩である彼氏がいる。
もう、年単位のお付き合いみたいだけど。
「…とりあえず、明日話すね。聞いてくれる?」
『大丈夫なの?夜、電話する?』
「ううん、大丈夫」



