(え…)
「…また、明日ね?」
振り返ると、そこにはいつもと変わらない、蓑島くんの飛びきりのスマイルがあった。
さっきまで私と繋がっていた手は、横にヒラヒラと揺れている。
「…うん、また明日」
バスに乗り込み、窓側の座席に座って外にいる蓑島くんに手を振り続ける。
バスが発車して、見えなくなるまでずっと。
見えなく、なった…。
(はぁ…)
蓑島くんの姿が見えなくなった途端、緊張が解けて、一気に疲れがドッと出た。
座席の背もたれに背中を深く預けてしまう。
(ああぁぁ…)
緊張した…お宅訪問。
緊張した…!
…と、そこはいいんだけど。
ゴタゴタながらも、何とか切り抜けたことにしよう。うん。
問題は、そこではない。
先程の蓑島家での様子を、じっくりと思い返す。
それは…微妙に感じていた、この『違和感』が露呈された結果となったのだった。
横川さんは、蓑島くんちのお向かいさんで。
そりゃあ、ただの幼なじみより近い存在だというのはわかる。
先日の球場での件もあるし。
…しかし、事態は想像通り、もしくはそれ以上だった。



