「あ…」
その袋を見た途端、何かに気付いた様子で、お母さんは目をキラキラと輝かせ始めた。
「こ、これ…パンダフルのパン!パンダフルのパンだ!」
「は、はい…うちの近くのパン屋さんです。ど、どうぞ…」
さっきの勢いを殺して、袋のパンをそっと渡す。
その二重の大きな目を更に輝かせていた。
「わぁー!やったー!ここのパン大好きなの!ありがとー!…あ、クリームチーズも入ってるー!これ、店頭に並んでるやつ!帯広の牧場から仕入れてるっていう…わぁー!」
そして、たーっと小走りでキッチンへ向かう。
「切って持ってくねー!あんた達、外行ってなさーい!」
早速ブレッドナイフを出して、バゲットを切りにかかろうとしていた。
「あはは。よかったね。喜んでるわ。せづ、ありがと」
「う、うん…」
「じゃ、外行こっか」
蓑島くんがリビングのドアを開けて出ようとしている。
お母さんに頭を下げて、後を追うが。
そのお母さんは、切ったバゲットをすでにつまみ食いしていてニコニコしていた。
なかなかお茶目なお母さんだ。
「蓑島くんのお母さん、可愛いね」
「そう?せづのお母さんも負けてないしょ」



