「ご、ごめんなさい!西尾が女装したとか言ってごめんなさい!悠介が知らない女の子連れてくるなんて初めてで!…あ、私、蓑島の母ですぅー!」
そして、私に向かってペコペコと何度も頭を下げている。
すみません!と言いながら。
「あ、い、いえ…」
何で?
何で初コンタクトで、お母さんにペコペコと頭を下げられてるの?私。
…でも、何か可愛いな。
蓑島くんのお母さん。
「ホント、ごめんなさいね!悠介の話だと西尾かもしくは伊野が来ると思ってたから!ステーキ肉用意しちゃったの!鹿肉はもうないから、その代わりに」
「………」
西尾くんと伊野くんに鹿肉を食べさせようと思ってたんだ…。
そこで、ふいに自分の手荷物を思い出した。
そういや、手土産持ってきたんだ。
この展開じゃ訪問マナーとか所作どころではない。
「あ、あのっ!こ、これ、おみやげですっ」
でも、それどころじゃないと言いながらも、急にブワッと緊張が吹き出してカミカミになってしまった。
緊張のあまり、バゲットとクリームチーズの入った袋をバッと目の前に差し出してしまう。
お母さんはビクッと驚いていた。
あ、ああぁぁっ!
ビックリさせてしまった!



