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(………)



何が何だかよくわかりません。






《だ、だってぇ…嬉しかったんだもん、北甲に勝てて…悠介、ホームラン打ってくれてぇ…》

《わ、わ、わかったって!い、い、いいから離れろっ!恥ずかしいだろが!》



そう言って、蓑島くんに飛び付いておもいっきり抱き着く、横川さん。

それを嫌がるような素振りを見せながらも照れていて、結局頭を撫でて背中をポンポンする蓑島くん。



《無理無理。横マネは蓑島のモンだろ?》



仕上げに、部員のこのセリフ…。



さっきから、この衝撃の出来事が頭を巡るのなんの。



何か…見てはいけないものを見てしまったような気がする。






…私は今、帰りの地下鉄に揺られている。

想いも一緒に…揺られている。



「お、そうだ。お疲れ」と言われた後も。

少し、蓑島くんを待ってみたが。

しばらく横川さんがくっついたままだった。



ようやく横川さんが離れても。

それは胸の中から離れただけで、ずっと傍にいる。

その寄り添う姿は、紛れもなく恋人同士だ。



あまりのショックに、話し掛ける気力すら失った。

西尾くんには「お疲れさま」と一声かけて、後はそのまま何も告げずにこっそり立ち去る。

とぼとぼと歩いて地下鉄の駅へと向かった。