バスが地下鉄の駅に到着して降車すると、私はまた走り出す。
時間が間に合わないワケじゃないけど、いても立ってもいられないから。
必要ないのに急いでいる。
せっかちに切符を買って、改札を駆け抜けて、地下鉄に乗り込んだ。
早く、行かなきゃ。
そんな走っている時はもう、蓑島くんのことしか考えてない。
蓑島くんが今、どうしているのか。
ただ、それだけ。
蓑島くんのことしか、考えられなかった。
今度は地下鉄に揺られて、外の景色を見る。
…札幌の地下鉄南北線は、南方面の四駅のみ地下鉄と言いながらも、地上を走っている。
地盤が固くて地中を掘り起こす事が出来ないという理由らしい。
そんなワケで、地下鉄と言いながらも地上を走っており、景色を眺める事が出来るのだ。ただの電車…。
景色に映る住宅街や背の低いビルを見ながら、蓑島くんのこと以外に、ふと思い出されることがある。
…それは、遠い昔の記憶。
『俺のマイラヴハニー!』
『今日はおまえのために、愛のホームランぶち込んでやるぜ!愛してる!』
それは、とても強烈な思い出。



