バスに揺られる中、冷静になってくるといろんな事に気付く。
あ、私。球場への行き方、知らない。
…焦って、麻生球場へのアクセスをスマホで調べる。
地下鉄は南北線乗って、終点まで行って…降りて少し歩けば着くんだ。
でも、勢いで飛び出しては来たけど。
いざ到着して。
もし、蓑島くんにでも遭遇してしまったら…。
『…え?ホントに来たの?うっそ。マジ?』
『学校サボって?うわー。そんなに俺のこと好き?ひょっとして、俺にベタ惚れしてんの?じゃあホテル行く?』
『とうとう爆乳捧げる気になった?イチゴ柄のパンツ履いてきてよー?うひひ…』
…など、セクハラモード全開で散々冷やかされそうだ。
蓑島くんの思うツボになりそう。
しまった…。
…でも、いい。
これで、いい。
…いや、操を捧げるとかそんなんじゃなくて。
私が、蓑島くんのところに行きたいんだ。
応援、したいんだ。
スマホの時計は、そろそろ10時になる。
間に合うかな。
今頃、蓑島くんは何してるんだろう。
もう球場に着いてるよね。
じゃあ、どんな気持ちでいるかな。
まだあのハイテンションのままかな。
それとも、不安が表に出てあわあわしてるんだろうか。
その姿は想像し難い。
そんなことを考えながら、バスの小さい窓から快晴の空を見上げていた。



