「やっぱあんたぁっ!…ハマってんじゃないのよおぉぉっ!」
「…ご、ご、ごめんなさいぃっ!」
斗弥子の怒号から逃げるように、咄嗟にダッシュをかける。
飛び出して全力で駆け出すと、あっという間に教室から離れていった。
「戻ったら説教だ!…星月ぃぃっ!」
いいぃぃっ!斗弥子、ごめんっ!
念を押されていたにも関わらず、こんなことしちゃって!
説教は後でたっぷり聞きます!
だから、今は…行かせて!
蓑島くんのところへ…球場へ!
斗弥子の声が響いていた廊下を駆け抜けていく。
逃げるためのダッシュは、足を進める度にそれはやがて前に進むためのダッシュへと変わっていった。
目的地に向かうための、ダッシュ。
誰もいない廊下を、夢中で駆け抜けるその足音はまた響く。
階段を小走りに降りて、正面玄関口へと向かった。
…行く。
行くんだ、蓑島くんのもとへ。
『頑張って』
…そう、言いに行くんだ!
何かしてあげられることはないのか、とか。
祈るしか出来ない、とか。
頭の中で悶々と考えているだけだったら、結局またしてもらうだけで…終わってしまう。



