「せ、せ、せ先生!…と、と、とトイレ!トイレ行ってきますっ!」
咄嗟についた嘘に吃りながら、恐る恐るとカバンの中のスマホと財布に手を伸ばす。
先生から目を離さず、そろりそろりと、さりげなくスカートのポケットに入れた。
「あ、そう…いってらっしゃい?」
「は、はい…」
先生は何の疑いもなく、また背を向けて板書を始めた。
ホッとしながら、そろりそろりと教室を出る。
怪しい動きで、まるでコソ泥のように。
(行かなきゃ…)
…行くんだ。
蓑島くんのところへ。
…でも、コソ泥というのは、罪人なので。
悪事ってやつは、いとも簡単にバレる。
「…星月っ!」
ようやく廊下に出たところで、怒号ともいえる声の様子で、名前を呼ばれる。
後ろめたさ満載のため、体が必要以上にビクッと震えた。
振り返ると、そこには。
「あんた、まさか…!」
「と、斗弥子っ…」
友人の斗弥子も、ガタッと席を立って私の方を向いている。
目がつり上がっていて、形相が恐い。
ば、バレてる…!
「…ちょっと待てぇっ!」
「うわあぁぁっ!」
静まり返った教室にて、一層響く斗弥子の怒りの声は、私の体を恐怖でビクッと震わせる。
や、やば…!



